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静かな廊下に自分の足音が響く。普段ならもっと騒がしいが、今は日の出のころだ。州府には本来誰もいないはずである。

……しかし、なかば確信を持って戸を叩いた。
「入ります。」
さっと戸を開け中に入ると、やはりというか書簡をあわててしまおうとしている紅州牧がいた。
「……今は勤務時間外だと思うのですが」
「えっと……すみませんっ」
せっかくの可愛い顔が隈で台無しだ。
「もう少し体をいたわるべきではありませんか?体を壊しては元も子もありませんよ」
「……ところで柴彰さんこそどうして此処に?」
いささか強引に話をずらされたがそうはさせまい。
「私は目が覚めてしまったので燕青殿の前話していた心配事を思い出しまして早くきてみただけですが」
うっと紅州牧は顔を引きつらせている。
「燕青と静蘭には内緒にしてください……」
「それはいいですがもう少し自重してくださいね。それと……これをどうぞ。」
いままでずっと脇に抱えていた包みを渡す。
「これは……」
彼女は包みを開いて中を見ると、目を見開いた。
それを見て私は思わずクスッと笑ってしまう。驚きでポカンとしている紅州牧なんてそうそう見られるものではない。
「この腕飾り……柴彰さんからですか?」
「そうですが。如何されました?」
「いえ、柴彰さんも贈り物するんですね……あっ、す、すみませんっ」
慌てた声にまたも笑みが零れそうになる。あんまりといえばあんまりだが、私はまあ仕方ないのだろう。
「いや。もう王都に戻られるのでしょう?それなので」
「素敵ですけど……こんな高そうなもの頂けませんよ」
彼女らしい。まあ商人が財布の紐を緩め時間を割いたものだから断られても困るのだが。と、ちょっとしたいたずら心が起きた。
「早くしないと代金を頂きますよ」
えっと彼女がつまった瞬間、私は彼女の頬に軽く口付けた。
触れるだけのような本当に軽いものだったが、彼女は完璧に固まってしまう。
「ではこれで帳消しですね」
にっこりと笑い踵を返す。そのまま扉に手をかけたところで彼女を振り返った。
「ちなみにその腕輪、実は私の手作りなんです。かなり遅くなりましたが秋祭りの贈り物。こちらの習慣では……知ってますか」
えっ、と我に返りこちらを振り向いた彼女の、頬を赤らめた顔を眺めながて。
今度こそ部屋から出ていった。


……ちなみにその後たまたま早く来ていた燕青は彰の裏のない心からの笑みという世にも珍しいものを見て、明日は丈夫な傘を持ってこようと思ったとか。
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日本と誕生日一緒な女子。そこらへんにいる学生ですが彩雲国とヒバツナとサンホラを与えると異常行動を起こす可能性があります。
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準危険物質→角川ビーンズ、NARUTO、京極夏彦、遙か、新体操
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