忍者ブログ
[19]  [18]  [16]  [14]  [13]  [12]  [11]  [10]  [9]  [8]  [7
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

濃紺の空は雲ひとつなく、瞬く星々は近くに見えて。途方もなく大きな夜空を横切るのは、ほの明るく浮かび上がる天の河。たくさんの小さな星々が寄り添い浮かぶ、淡く優しい光の河。
幼い頃から何度も見上げているのに、何度だって魅かれてしまう、美しい夜空。


庭院で空を見上げていたらふと、とす、と肩に小さな重みと温もりを感じる。
驚いて振り返れば、背の君が屋敷の明かりで朧げに見えた。気配も足音もまるでしなかったのに。
「すまないね、熱心に見てたから……夜風は冷たいし風邪ひかないようにね」
肩に掛けられたのは上衣だった。まだ温もりが残っている。
「楸瑛様こそそんな薄着じゃ風邪ひきます」
慌てて返そうとすれば笑顔でもう一度肩に掛けられた。
「じゃあ私は秀麗に温めてもらうから」
背中から腕を回され抱きしめられる。諦めてありがたく借りることにして、彼を振り返れば空を見上げていた。
「綺麗だね」
優しい微笑み。思わず見蕩れていたら、視線を下ろした彼と目が合った。
「秀麗には負けるけど」
綺麗な微笑みのままさらっと言って口づけられる。頬が熱くなって咄嗟に顔を背けたけれど、彼の手が頬に触れた。
「顔、熱いよ」
「楸瑛様の手が冷たいだけです」
楽しげな彼の声に、言い返してみたら一瞬体が離れた。振り返る前に体が浮かぶ。いや、抱き上げらた。
「じゃあ温めてもらおうかな」
にこ、とやっぱり綺麗な笑顔を浮かべてそっと囁かれる。
庭院を横切るとそのまま屋敷に入っていく。何となく行き先を察知して青ざめた。明日は出仕しないといけないのに。
「明日は普通に仕事がありますよねっ!?」
「織姫は恋に夢中なあまり仕事をほったらかしてしまったけれど、私のお姫様は仕事に熱心なあまり夫をほったらかすからね。神様だって怒りはしないよ」
うっと詰まる。心当たりは星の数程あった。それでも上目遣いに見上げれば、彼はふっと顔を緩めて。
「天の川には、小さくて似た星が本当にたくさん集まってるけど、織姫と彦星は互いがちゃんと見つかるんだね」
歩みが止まったと思ったら寝室についたようだった。部屋に歩み入りそっと寝台に下ろされる。彼は前かがみになった体勢のまま敷布に手をついて、優しく口付ると笑った。
「何処にいたって私は秀麗を見つける自信があるし、たとえ滅多に会えなくったってやっと出会えた姫をずっと愛するけどね。帰ってきたと思ったら星ばかり見上げて……嫉妬もするよ」
思わずくすっと笑ってしまった。
「星に嫉妬ですか?………天の河に、願い事をしてたんです」
一瞬迷って、でも目を瞑ってもう一度、今度は背の君に向けて唱えた。

「この世で一番愛してる、我が背の君とずっと一緒にいられますように」


見ものだった。光を遮るようにかがんでいるのがもったいない。目を見張って僅かに赤面している。けれど可愛いと思う間もなく片手で顔を覆うといつもの微笑を取り戻してしまった。
「私も、秀麗に。永久に一緒にいられますように」
きっと、今日一番の綺麗な笑顔。
そしてどちらからともなく互いの唇を重ねると、互いが共にある幸せに、抱き合った。

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
最新コメント
プロフィール
HN:
水音
性別:
非公開
自己紹介:
日本と誕生日一緒な女子。そこらへんにいる学生ですが彩雲国とヒバツナとサンホラを与えると異常行動を起こす可能性があります。
危険物質→楸秀、ヒバツナ、サンホラ
準危険物質→角川ビーンズ、NARUTO、京極夏彦、遙か、新体操
忍者ブログ [PR]


(Design by 夜井)